WYMM Tour: Tokyo
日時:2025年10月14日(火) 10:00 – 17:00
オックスフォード・ナノポアテクノロジー社のユーザーグループ・ミーティング "What you're missing matters (WYMM) 2025" を東京で開催いたします。
今年は「ナノポアが拓く次世代のマルチオミクス解析」というテーマで、オックスフォード・ナノポアシーケンスの様々な活用例を、第一線でご活躍の研究者からご講演いただきます。
ナノポアの技術で、構造変異やメチル化を包括的に把握し、ずっと取り組みたいと考えていた大胆な研究課題にチャレンジし、ヒトゲノムやがんゲノムの未知の答えを一緒に探り出しましょう。希少疾患のヒトゲノムからがん研究のシーケンシングなど、最新のご講演のほか、製品展示、ナノポアコミュニティーと交流できる意見交換会、ナノポア専門家と相談する機会などが含まれます。
本イベントの参加費用は無料ですが、事前登録が必要で座席数に限りがあります。昼食と軽食が提供されます。対面式のイベントです。
参加登録後、events@nanoporetech.com から登録完了の電子メールを送信させていただきます。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
Agenda
時間 | アジェンダ (予定) | 演者 (敬称略) |
|---|---|---|
10:00 - 10:30 | レジストレーション | |
10:30 - 10:45 | ご挨拶 | Gretchen Weightman,オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
10:45 - 11:20 | ロングリードシークエンス技術による霊長類ゲノムの構築と解析 | 片山 琴絵,東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター |
11:20 - 11:55 | 稀少遺伝性疾患のロングリードDNAメチル化解析 | 水口 剛,横浜市立大学大学院医学研究科 |
11:55 - 12:30 | Oxford Nanopore Technologies Adaptive samplingを用いた遺伝性難聴の原因診断 | 西尾 信哉,信州大学医学部 |
12:30 - 13:30 | ランチ | |
13:30 - 14:05 | Latest Advances from Oxford Nanopore Technologies at London Calling 2025 | 金 智慧(キムジヘ),オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
14:05 - 14:40 | 遺伝子重複の研究展開を加速するロングリードシークエンス活用術 | 武居 宏明,九州大学医学研究院 |
14:40 - 15:15 | 肺癌ゲノム・エピゲノム異常の包括的理解を目指したロングリード全ゲノムシークエンス解読 | 鈴木 絢子,東京大学大学院新領域創成科学研究科 |
15:15 - 15:45 | コーヒーブレイク | |
15:45 - 16:20 | 長鎖RNAシークエンスを用いたがんRNAプロセシングの理解と治療法開発 | 吉見 昭秀,国立がん研究センター研究所 |
16:20 - 17:00 | パネルディスカッション | |
17:00 - 17:10 | 閉会のご挨拶 | Daniel Raciti,オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
17:10 - 19:00 | 意見交換会 |
Speakers
近年、ロングリードシークエンシング技術の進歩に伴い、ヒトをはじめとする霊長類においてTelomere-to-Telomere(T2T)リファレンスの整備が大きな注目を集めている。我々は、毒性試験、免疫学研究、ワクチン開発などに広く利用されているモデル霊長類であるカニクイザルからロングリードシークエンスデータを新規に取得し、カニクイザルのディプロイドゲノムリファレンスの構築を行うことで個体それぞれにおけるゲノムの違いを高解像度で解析している。ディプロイドゲノムリファレンスの構築には多くの困難を伴う。リファレンスを構築するためのアセンブリの過程において、配列の類似性からコンティグ同士が錯綜する複雑な構造が出現した。我々は、この複雑に入り組んだ分離されない領域を生み出す原因は繰り返し配列が関与すると考え、詳細な解析を通して新規のVNTRを同定し、その領域の配列としての特性を明らかにすると共に生物学的な意義を検討している。更に、複数のカニクイザルに対してそれぞれ得られた高精度なディプロイドゲノムを用い、MHC領域の地理的、及び個体的差異を解析し、霊長類における免疫関連遺伝子などの高多様性領域の理解と疾患との関連性の発見を目指している。本講演では、ロングリードシークエンスデータを最大限に活用するための実践的なアプローチと、霊長類ゲノミクスにおける課題と展望を共有する。
近年、ロングリードシークエンシング技術の進歩に伴い、ヒトをはじめとする霊長類においてTelomere-to-Telomere(T2T)リファレンスの整備が大きな注目を集めている。我々は、毒性試験、免疫学研究、ワクチン開発などに広く利用されているモデル霊長類であるカニクイザルからロングリードシークエンスデータを新規に取得し、カニクイザルのディプロイドゲノムリファレンスの構築を行うことで個体それぞれにおけるゲノムの違いを高解像度で解析している。ディプロイドゲノムリファレンスの構築には多くの困難を伴う。リファレンスを構築するためのアセンブリの過程において、配列の類似性からコンティグ同士が錯綜する複雑な構造が出現した。我々は、この複雑に入り組んだ分離されない領域を生み出す原因は繰り返し配列が関与すると考え、詳細な解析を通して新規のVNTRを同定し、その領域の配列としての特性を明らかにすると共に生物学的な意義を検討している。更に、複数のカニクイザルに対してそれぞれ得られた高精度なディプロイドゲノムを用い、MHC領域の地理的、及び個体的差異を解析し、霊長類における免疫関連遺伝子などの高多様性領域の理解と疾患との関連性の発見を目指している。本講演では、ロングリードシークエンスデータを最大限に活用するための実践的なアプローチと、霊長類ゲノミクスにおける課題と展望を共有する。
片山 琴絵, 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターメチル化アレイやショートリードシーケンスはCpG分解能でメチル化解析が可能だが、化学・酵素変換、PCR、短リード長、間接的推定などの制約がある。一方、ナノポアロングリードシーケンスは10kb超のネイティブDNAを読み取り、DNA配列解析と同時にメチル化を検出する。稀少遺伝性疾患ゲノム解析においてはこのような特性を活かしてゲノム変異の病原性評価や診断の補助ツールとして活用が期待される。本発表ではリピート領域におけるメチル化解析、フェージングによるアリル特異的メチル化の検出、エピシグネチャー検出などを例に従来の多段階的診断プロセスを単一の診断アッセイに集約できる可能性について議論したい。
メチル化アレイやショートリードシーケンスはCpG分解能でメチル化解析が可能だが、化学・酵素変換、PCR、短リード長、間接的推定などの制約がある。一方、ナノポアロングリードシーケンスは10kb超のネイティブDNAを読み取り、DNA配列解析と同時にメチル化を検出する。稀少遺伝性疾患ゲノム解析においてはこのような特性を活かしてゲノム変異の病原性評価や診断の補助ツールとして活用が期待される。本発表ではリピート領域におけるメチル化解析、フェージングによるアリル特異的メチル化の検出、エピシグネチャー検出などを例に従来の多段階的診断プロセスを単一の診断アッセイに集約できる可能性について議論したい。
水口 剛, 横浜市立大学医学部遺伝学准教授, 横浜市立大学大学院医学研究科先天性難聴は、新出生児1,000人に1〜2人に認められる比較的頻度の高い疾患であり、そのうち60〜70%に遺伝子が関与することが推測されている疾患である。従来、SNVや短いins/delが中心に解析されていたが、Copy Number Variation (CNV)の関与が明らかとなってきたことより、ショートリード型次世代シークエンサー(NGS)の読み取り深度(Read Depth)データを用いたコピー数解析が広く実施されるようになってきている。 しかしながら、ショートリード型NGSを用いた解析では、segmental duplication 領域の塩基配列決定やCNVのブレイクポイントの同定、逆位・転座などの構造異常の検出は困難である。ロングリード型NGSはこのような比較的複雑なゲノム構造の変化を解析する際に非常にパワフルなツールである。 難聴の原因遺伝子としては、現在までに150種類以上の遺伝子が同定されているが、その中の一つであるOTOF遺伝子は、常染色体潜性遺伝形式をとる非症群性難聴およびAuditory Neuropathy Spectrum Disorder (ANSD)の原因遺伝子である。現在までに約300種類の病的バリアントが報告されているが、コピー数増加(copy gain)バリアントに関してはこれまでに報告されてない。本研究ではANSD症状を呈する難聴患者1例を対象に、ショートリード型NGS解析を行なったところ、OTOF遺伝子にc.5385C>AバリアントとOTOF遺伝子の一部分コピー数増加(1 copy gain)を同定した。しかしながら、コピー数の増加がどのように生じているかは不明であり、病的意義も明らかとなっていなかった。 そこで、Oxford Nanopore TechnologiesのP2 soloを用いたロングリード型NGS解析を行うことにした。ターゲット領域のdepth of coverageを稼ぐため、OTOF遺伝子の上流および下流1Mbpをターゲット配列に設定したAdaptive sampling法を用いてrunを行った。その結果、chr2の26,477,852~26,483,106の重複(OTOF遺伝子NM_001287489のエクソン14~エクソン18を含む5254塩基の重複)を同定することができた。また、ロングリード型次世代シークエンサーのデータ用いたハプロタイプフェージングを行った結果、SNVとCNVがtransに位置しており、複合ヘテロ接合体となっていることを確認することができた。このように、ロングリード型NGSはStructural Variant (SV)の解析に非常に有用であり、特にブレークポイントや逆位、転座の検出と解析の際の非常に強力なツールである。また、Adaptive sampling法を用いてターゲット領域の配列のenrichmentを行うことで、ハプロタイプフェージングがしやすくなるため、疾患との関係を解析する上で非常に有用であった。講演ではOTOF遺伝子に加え、他の研究に関してもOxford Nanopore Technologiesのロングリード型NGSやAdaptive samplingをどのように活用しているかについても紹介する予定である。
先天性難聴は、新出生児1,000人に1〜2人に認められる比較的頻度の高い疾患であり、そのうち60〜70%に遺伝子が関与することが推測されている疾患である。従来、SNVや短いins/delが中心に解析されていたが、Copy Number Variation (CNV)の関与が明らかとなってきたことより、ショートリード型次世代シークエンサー(NGS)の読み取り深度(Read Depth)データを用いたコピー数解析が広く実施されるようになってきている。 しかしながら、ショートリード型NGSを用いた解析では、segmental duplication 領域の塩基配列決定やCNVのブレイクポイントの同定、逆位・転座などの構造異常の検出は困難である。ロングリード型NGSはこのような比較的複雑なゲノム構造の変化を解析する際に非常にパワフルなツールである。 難聴の原因遺伝子としては、現在までに150種類以上の遺伝子が同定されているが、その中の一つであるOTOF遺伝子は、常染色体潜性遺伝形式をとる非症群性難聴およびAuditory Neuropathy Spectrum Disorder (ANSD)の原因遺伝子である。現在までに約300種類の病的バリアントが報告されているが、コピー数増加(copy gain)バリアントに関してはこれまでに報告されてない。本研究ではANSD症状を呈する難聴患者1例を対象に、ショートリード型NGS解析を行なったところ、OTOF遺伝子にc.5385C>AバリアントとOTOF遺伝子の一部分コピー数増加(1 copy gain)を同定した。しかしながら、コピー数の増加がどのように生じているかは不明であり、病的意義も明らかとなっていなかった。 そこで、Oxford Nanopore TechnologiesのP2 soloを用いたロングリード型NGS解析を行うことにした。ターゲット領域のdepth of coverageを稼ぐため、OTOF遺伝子の上流および下流1Mbpをターゲット配列に設定したAdaptive sampling法を用いてrunを行った。その結果、chr2の26,477,852~26,483,106の重複(OTOF遺伝子NM_001287489のエクソン14~エクソン18を含む5254塩基の重複)を同定することができた。また、ロングリード型次世代シークエンサーのデータ用いたハプロタイプフェージングを行った結果、SNVとCNVがtransに位置しており、複合ヘテロ接合体となっていることを確認することができた。このように、ロングリード型NGSはStructural Variant (SV)の解析に非常に有用であり、特にブレークポイントや逆位、転座の検出と解析の際の非常に強力なツールである。また、Adaptive sampling法を用いてターゲット領域の配列のenrichmentを行うことで、ハプロタイプフェージングがしやすくなるため、疾患との関係を解析する上で非常に有用であった。講演ではOTOF遺伝子に加え、他の研究に関してもOxford Nanopore Technologiesのロングリード型NGSやAdaptive samplingをどのように活用しているかについても紹介する予定である。
西尾 信哉, 人工聴覚器学講座准教授, 信州大学医学部本テックアップデートでは、London Calling 2025で発表された最新情報をご紹介します。 「Complete Biology」イニシアチブのもと、オックスフォード・ナノポアテクノロジーズはゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームにわたる技術開発を推進しています。最新のDoradoベースコーリングにより精度が向上し、DNA/RNA修飾検出、ターゲットシーケンス、T2Tアセンブリがさらに強化されました。また、タンパク質解析への取り組みにより、マルチオミクス研究の新たな可能性が広がっています。これらの進展は、統合的なワークフローと複雑な生物学のリアルタイム解析を支える基盤となります。
本テックアップデートでは、London Calling 2025で発表された最新情報をご紹介します。 「Complete Biology」イニシアチブのもと、オックスフォード・ナノポアテクノロジーズはゲノム、エピゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームにわたる技術開発を推進しています。最新のDoradoベースコーリングにより精度が向上し、DNA/RNA修飾検出、ターゲットシーケンス、T2Tアセンブリがさらに強化されました。また、タンパク質解析への取り組みにより、マルチオミクス研究の新たな可能性が広がっています。これらの進展は、統合的なワークフローと複雑な生物学のリアルタイム解析を支える基盤となります。
金 智慧(キムジヘ), シニア・フィールド・アプリケーション・サイエンティスト, オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ近年のロングリードシークエンス技術の発展はゲノム上に存在する構造多型の発見・解析に大きく貢献してきた。反復ユニットが連続的に並んだ領域(遺伝子アレイ)では、反復回数(コピー数)の変化に伴い、遺伝子量効果の変化だけでなく遺伝子疾患の原因となることも明らかとなっている。我々は、遺伝子アレイの構造変化、特に技術の確立が未熟な伸長を実験的に再現するべく研究を行っており、その中で縦列遺伝子アレイ伸長技術BITRExを開発した。この技術は、ゲノム上に存在する天然の遺伝子アレイのみならず、人工遺伝子アレイの伸長にも有効である汎用性から、合成進化戦略や実験的進化、産業応用といった様々な分野への発展が期待できる。一方で、目的の遺伝子アレイの導入は、構造不安定性によるコピー数変動が多発するため、ロングリードシークエンスを絡めた実験的手法の習熟が必須である。そこで本発表では、遺伝子アレイを導入した細胞株の作製の過程にも焦点を当て、プラスミド作製や細胞株樹立から解析対象の遺伝子アレイ伸長の解析まで、一連のナノポアシークエンシングの応用例を中心に紹介する。
近年のロングリードシークエンス技術の発展はゲノム上に存在する構造多型の発見・解析に大きく貢献してきた。反復ユニットが連続的に並んだ領域(遺伝子アレイ)では、反復回数(コピー数)の変化に伴い、遺伝子量効果の変化だけでなく遺伝子疾患の原因となることも明らかとなっている。我々は、遺伝子アレイの構造変化、特に技術の確立が未熟な伸長を実験的に再現するべく研究を行っており、その中で縦列遺伝子アレイ伸長技術BITRExを開発した。この技術は、ゲノム上に存在する天然の遺伝子アレイのみならず、人工遺伝子アレイの伸長にも有効である汎用性から、合成進化戦略や実験的進化、産業応用といった様々な分野への発展が期待できる。一方で、目的の遺伝子アレイの導入は、構造不安定性によるコピー数変動が多発するため、ロングリードシークエンスを絡めた実験的手法の習熟が必須である。そこで本発表では、遺伝子アレイを導入した細胞株の作製の過程にも焦点を当て、プラスミド作製や細胞株樹立から解析対象の遺伝子アレイ伸長の解析まで、一連のナノポアシークエンシングの応用例を中心に紹介する。
武居 宏明, 九州大学 大学院医学研究院 医化学分野がん細胞はさまざまなゲノム変異・エピゲノム異常を有しており、その生起パターンを明らかにすることは、がんの進展メカニズムを解明する上で重要である。本研究グループが着目する大細胞神経内分泌癌(LCNEC)は悪性度の高い肺癌のサブタイプであり、そのゲノム上には大規模構造変異や染色体外DNA様の極端なコピー数増加などが多く見いだされている。また、LCNECは神経内分泌タイプや非神経内分泌タイプなど症例によって異なる分化パターンを示すため、エピゲノム計測も必須である。本発表では、LCNECにて生じているオミクスステータス異常を、PromethIONによって解析した結果について紹介したい。
がん細胞はさまざまなゲノム変異・エピゲノム異常を有しており、その生起パターンを明らかにすることは、がんの進展メカニズムを解明する上で重要である。本研究グループが着目する大細胞神経内分泌癌(LCNEC)は悪性度の高い肺癌のサブタイプであり、そのゲノム上には大規模構造変異や染色体外DNA様の極端なコピー数増加などが多く見いだされている。また、LCNECは神経内分泌タイプや非神経内分泌タイプなど症例によって異なる分化パターンを示すため、エピゲノム計測も必須である。本発表では、LCNECにて生じているオミクスステータス異常を、PromethIONによって解析した結果について紹介したい。
鈴木 絢子, 東京大学大学院新領域創成科学研究科シス/トランス制御因子の変異による異常RNAスプライシングは、新たながんのホールマークとして注目されている。 トランス作用因子であるスプライシング因子の変異に対してはスプライソソーム阻害薬の開発が進んでいる一方、イントロン関連バリアント(IRAVs)などのシス作用的スプライス部位変異は直接的に遺伝子のスプライシングを改変する。230,000件を超えるRNA-seqデータ解析により、TP53-IRAVが全がんの約3%に認められた。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)はこのような異常スプライシングを是正し得るが、スプライシング機構に関する知識の不足が設計を阻害している。そこで我々は、抗体非依存的にRNA結合タンパク質(RBP)結合部位を同定する手法「hareCLIP-seq」を開発し、TP53-IRAVによって誘導されるSRSF/hnRNPエレメントを明らかにした。これらを標的とするASOはp53/p21発現を回復させ、シスプラチンとの併用によりTP53-IRAV腫瘍モデルで著明な腫瘍退縮と生存期間延長をもたらした。さらに、LNP封入ASOは全身投与でも有効性を示した。さらに、hareCLIP-seqと長鎖RNAシークエンスを組み合わせることにより、反復配列など短鎖シークエンスでは解析困難な領域についてもRBP結合部位をprofilingすることに成功した。 次に我々は、分子標的治療が進行期で存在しない難治性悪性腫瘍であるユーイング肉腫(ES)におけるASOの有用性を検討した。CRISPRスクリーニングにより、EWS::FLI1mRNA(約85%のESでドライバーとなる)を安定化させるRBPとしてIGF2BP1を同定した。Direct RNA sequenceにより、IGF2BP1はm6A修飾を介して、IGF2BP1-EWS::FLI1間にフィードフォワードループを形成することを見出した。その相互作用を阻害するASOを設計したところ、IGF2BP1結合を効率的に阻害し、ES細胞においてin vitroおよびinvivoでアポトーシスを誘導した。さらに機械学習を用いたLNP製剤の最適化により、腫瘍特異的デリバリーを高め、肝臓や血管内皮細胞へのオフターゲット取り込みを最小化することに成功した。これにより、ESにおけるASO治療の有効性についての概念を実証することができた。
シス/トランス制御因子の変異による異常RNAスプライシングは、新たながんのホールマークとして注目されている。 トランス作用因子であるスプライシング因子の変異に対してはスプライソソーム阻害薬の開発が進んでいる一方、イントロン関連バリアント(IRAVs)などのシス作用的スプライス部位変異は直接的に遺伝子のスプライシングを改変する。230,000件を超えるRNA-seqデータ解析により、TP53-IRAVが全がんの約3%に認められた。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)はこのような異常スプライシングを是正し得るが、スプライシング機構に関する知識の不足が設計を阻害している。そこで我々は、抗体非依存的にRNA結合タンパク質(RBP)結合部位を同定する手法「hareCLIP-seq」を開発し、TP53-IRAVによって誘導されるSRSF/hnRNPエレメントを明らかにした。これらを標的とするASOはp53/p21発現を回復させ、シスプラチンとの併用によりTP53-IRAV腫瘍モデルで著明な腫瘍退縮と生存期間延長をもたらした。さらに、LNP封入ASOは全身投与でも有効性を示した。さらに、hareCLIP-seqと長鎖RNAシークエンスを組み合わせることにより、反復配列など短鎖シークエンスでは解析困難な領域についてもRBP結合部位をprofilingすることに成功した。 次に我々は、分子標的治療が進行期で存在しない難治性悪性腫瘍であるユーイング肉腫(ES)におけるASOの有用性を検討した。CRISPRスクリーニングにより、EWS::FLI1mRNA(約85%のESでドライバーとなる)を安定化させるRBPとしてIGF2BP1を同定した。Direct RNA sequenceにより、IGF2BP1はm6A修飾を介して、IGF2BP1-EWS::FLI1間にフィードフォワードループを形成することを見出した。その相互作用を阻害するASOを設計したところ、IGF2BP1結合を効率的に阻害し、ES細胞においてin vitroおよびinvivoでアポトーシスを誘導した。さらに機械学習を用いたLNP製剤の最適化により、腫瘍特異的デリバリーを高め、肝臓や血管内皮細胞へのオフターゲット取り込みを最小化することに成功した。これにより、ESにおけるASO治療の有効性についての概念を実証することができた。
吉見 昭秀, 東京大学大学院 連携教授, 国立がん研究センター研究所
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