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ナノポ ア シ ー ク エ ン ス 全 ゲノム に より疾患変異同定を過去最速で可能に

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全ゲノムシークエンス(WGS)は、遺伝性疾患の原因となる変異を同定する方法として最も網羅的なものですが、急性疾患患者に用いる上でその所要時間が障壁になっています。ある原理実証試験で、スタンフォード大学医学部が率いる研究者チームが、効率的なサンプル調製と超高速なナノポア WGS、高速での変異コールおよび優先順位付けを組み合わせた新たなワークフローを開発し1,2、クリニカルリサーチサンプルの正確なゲノムワイド変異コールを過去最短の 8 時間以内に実 施できることを示しました2

ショートリードに 基づく W G S を病 原性 変 異の 検 出に用いる際 にかかる時間が、迅速にデータを取得する必要がある状況ではボトルネックとなります2。Goenka らは、カバレッジの高いヒトナノポアW G S 用のエンドツーエンドワークフロー(図1) を 公 開して います。リアルタイムでのベースコール、シークエンスアライメント、小変異お よ び 構 造 変 異( S V ) の 高 速 で の コ ー ル と フ ィ ル タ リ ン グ と 併 せ て 、シークエンスに要する時間は 2 時間です。同チームは、ヒトリファレンスゲノムサンプル(HG002)を用いてこの方法を最適化し、12 種類のクリニカルリサーチサンプルにこのワークフローを適用して1、8 時間以内に原因変異候補を同定できることを示しました2

これを達成するに当たり、同チームは効率的なサンプル調製に重点を置き、限られた量の血液から十分な量の高品質ゲノム DNA を抽出できるように標準的なライブラリ調製プロトコールを作成し、PromethION 48 の 48 枚のフローセル全てにシークエンス作業を割り当てられるようにしました2。フローセルを複数のサンプルに再利用することによってサンプル当たりのコストが削減できます。

"..PromethION プラットフォームは 4 8 枚のフローセルを搭 載でき、 1 個のサンプルを 2 時間で臨床品質の カバレッジまでシークエンスすることが 可能です"

サンプ ル の キ ャリー オ ー バ ー を 避 けるに は 、 ランごとに W a s h キットによりヌクレアーゼ洗浄を実 施すれば十分であることが 確認されました。約 2 時間以内のシークエンスにより、ダウンストリームの変異コール用に高収量(200 Gb のシークエンスデータ)を得ることができました。

同チームはランタイムを削減するため、超並列処理と GPU アクセラレーションを備えたクラウドベースのモジュール(Google Cloud Platform)を開発し、シークエンスの進行中にリアルタイムで高精度なベースコールとシークエンスアライメントを実施できるようにしま

図1 超高速なエンドツーエンドの全ゲノムナノポアシークエンスパイプライン(サンプル採取から変異候補の同定まで)の概要。並行して実施する手順は垂直方向に配置しています。このパイプラインを用いることにより、検討したいずれのサンプルでも 8 時間以内に変異候補を同定することができました。図の出典:Goenka et al. 20222.

した。また、変異コールパイプラインの高速化も実現しました。さ ら に 、同 研 究 者 ら は 、フェ ーズ 情 報 を 用 い る こ と が 特 に 重 要 で あ り 、大 きくて 複 雑 な ゲノムで は 変 異 コ ール 性 能 が 目 に 見 えて 上 昇 すると述べています。

変 異フィル タリング お よ び 優 先 順 位 付 け に 従 来 の 方 法 を 用 いた 場 合のもう一つの難点として、同定される候補の数の多さ(最大 100 程度)があり、きわめて迅速な対応を迫られる臨床現場に WGS を今後応用する上で 障 壁になることが 考えられます。「迅速な対応を迫られる現場においての目標は、既知の疾患遺伝子の変異のうち、病原性が明らかで治療標的になり得るものの変異を迅速に検出するこ と で し た 。」 そこで、研究者らは、変異候補を効果的にフィルタリングおよびキュレーションする方法の開発にも注力しました。超 高 速 なエンドツーエンドワークフローの 最 終 段 階 です(図1)。

Goenka らは、重症 SARS-CoV-2 感染症と併存疾患を発症し、重篤な状態にある 57 歳の男性、および筋緊張異常/後弓反張と発達遅滞の既往がある 14 ヵ月の女児(診断検査の結果が確定的でなく、遺伝性のものである可能性が示唆されました)から得た 2 つのクリニカルリサーチサンプルに同チームのワークフローを適用し、リアルワールドでの性能を示しました2。新生児のサンプルについては 、 標 準 システムで 確 認 さ れ た 変 異 が 1 4 7 個 で あった の に 対して、31 個の小変異と 21 個の構造変異が同定され(手動によるレビュー)、同研究者らの変異コールとフィルタリングパイプラインの方が標準的な 方 法 よ り も 優 れ て い る こ と が 示 さ れ ま し た(図2)。

いずれの患者の場合も、約 2 時間でナノポア WGS が高いカバレッジに達し、サンプル調製を開始してから 7 時間以内に変異コールとアノテーションが完了し、8 時間以内に変異候補を特定することができました。

図2 クリニカルリサーチサンプルを用いた標準変異フィルタリングパイプラインと超高速変異フィルタリングパイプラインの比較。標準パイプラインでは 147 個の変異が確認されたのに対して、超高速パイプラインで同定された変異はわずか 31 個で、変異候補の手動によるレビューに必要な時間が大幅に減少することになります。図の出典:Goenka et al. 20222.
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References

• リアルタイムで の ベ ースコールとアライメントを実現し、過去最短の所要時間を達成

• 小変異と構造変異の正確なゲノムワイドコールを可能に

• 柔 軟 か つ ハ イス ル ープット の 全 ゲノム シ ー ク エ ン スを実現