ロングリードによりシングルセルから完全長アイソフォームを取得

シングルセルレベルでcDNAをシークエンスすることにより、各細胞のトランスクリプトームの差を明らかにすることができます。シングルセル遺伝子発現を解析できるようになったことから、ある微生物の様々な種類の組織や細胞がどのようにゲノムを利用してそれぞれの機能を発揮しているについて知見が得られており、疾患機序が解明されています。例えば、シングルセルシークエンスにより、ヒトの神経疾患1と関連のある遺伝子発現異常やがん2における遺伝子発現異常が特定されています。

シングルセルから得たRNAは、10x Genomics社のマイクロ流体力学技術に基づくChromiumプラットフォームを用いて調製することができます。このプラットフォームでは、個々の細胞からバーコード付き完全長cDNAを作成します。ただし、このようなシングルセルライブラリに対して従来のショートリードシークエンスを実施した場合は通常、各トランスクリプトの一方の末端にアライメントされたシークエンスが約90 bp得られるにとどまります。このように各トランスクリプトの存在率が低いことから、アイソフォームレベルの発現を定量化することは困難です。さらに、ショートリードでは融合部位全体をカバーできる可能性が低いため、融合転写物の検出も困難になります3。ナノポアシークエンスであれば10x Genomics社のサンプル調製法と互換性があり、完全長のトランスクリプトやスプライスバリアントのシークエンスに使用できるため、アイソフォームの多様性やアイソフォームスイッチ(発現時など)に関する詳細を把握することができます。また、ナノポアのロングリードでは、一塩基多型(SNP)(RNAを用いたジェノタイピング)とがんと関連のあることが多い融合遺伝子の両方を検出することができます。