WYMM Tour: Tokyo
日時:2024年8月22日(木) 10:30 – 17:30
場所:品川、東京都
What you're missing matters (WYMM)というテーマで、オンサイトイベントを開催いたします。ナノポアシークエンスをご活用中の先生方から日本語でご講演いただきます。
Generate ultra-rich data for answers with impact. 豊富かつ多面的なデータから答えを探し出しませんか?
ナノポアの技術で、構造変異やメチル化を包括的に把握し、ずっと取り組みたいと考えていた大胆な研究課題にチャレンジし、ヒトゲノムやがんゲノムの未知の答えを一緒に探り出しましょう。
What you're missing matters. Stay on top of what's next. 見逃しているものこそが鍵に!未来を切り開いていきましょう!
希少疾患のヒトゲノムからがん研究のシーケンシングなど、最新のご講演のほか、製品展示、ナノポアコミュニティーと交流できる意見交換会、ナノポア専門家と相談する機会などが含まれます。
本イベントの参加費用は無料ですが、事前登録が必要で座席数に限りがあります。昼食と軽食が提供されます。対面式のイベントです。
参加登録後、events@nanoporetech.com から登録完了の電子メールを送信させていただきます。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
Agenda
時間 | アジェンダ (予定) | 演者 (敬称略) |
|---|---|---|
10:00 — 10:30 | レジストレーション | |
10:30 — 10:40 | ご挨拶 | Daniel Raciti, オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
10:40 — 11:00 | What you’re missing matters - 臨床研究におけるナノポア製品の活用について - | 山重 りえ, オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
11:00 — 11:30 | A novel giant extrachromosomal element “Inocle” potentially expands the adaptive capacity of the human oral microbiome | 鈴木 穣, 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 生命システム観測分野 |
11:30 — 12:00 | FlongleフローセルとLong PCR:ショートリードNGSの隙間を埋める | 小原 收, 公益財団法人かずさ DNA 研究所 |
12:00 — 12:30 | ナノポアシークエンサーを用いたゲノム機能解析 | 永江 玄太, 東京大学先端科学技術研究センター ゲノムサイエンス&メディシン分野 |
12:30 — 13:30 | ランチ | |
13:30 — 14:00 | R10.4.1を使ったCas9エンリッチメント | 三橋 里美, 聖マリアンナ医科大学 |
14:00 — 14:30 | P2iを用いたがんゲノム解析と実績 | 鈴木 啓道, 国立がん研究センター研究所 脳腫瘍連携研究分野 |
14:30 — 15:00 | ナノポアシーケンスにより明らかになった日本人における脊髄小脳変性症SCA27B (GAA-FGF14 ataxia)の遺伝学的特徴 | 宮武 聡子, 横浜市立大学附属病院遺伝子診療科 |
15:00 — 15:30 | コーヒーブレイク | |
15:30 — 16:00 | Adaptive samplingによる小児白血病のゲノムプロファイリング | 加藤 元博, 東京大学医学部附属病院 小児科 |
16:00 — 16:30 | ロングリード・パンゲノム参照配列を用いたセントロメア解析手法 | 白石 友一, 国立がん研究センター研究所 ゲノム解析基盤開発分野 |
16:30 — 17:00 | オックスフォード・ナノポアテクノロジーズのテクニカルアップデート | 金 智慧, オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
17:00 — 17:05 | 閉会のご挨拶 | 小松 鉄平, オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ |
17:05 — 19:00 | 意見交換会 |
Speakers
Extrachromosomal elements (ECEs) are major components of the human microbiome, expanding the gene repertoire of host bacteria to alter their traits. We developed long-read metagenomics technology coupled with an efficient microbial DNA extraction method from saliva samples and discovered a previously unrecognized family of ECEs. These ECEs reside in 68% of the human oral microbiome globally. We refer to this ECE as “Inocle”, characterized by insertion sequences encoded, oral origin, and circle genomic structure. Inocles are plasmid-like elements of an average genome size of 330kb, having Streptococcus as a host bacterium, and encode a series of genes related to stress tolerance and cell wall modification. Moreover, Inocles showed significant associations with immune-related cells and proteins in peripheral blood and marked reductions in patients with certain cancers. These findings suggest that Inocles potentially boost the adaptive capacity of host bacteria in the oral environment to fit the physiological conditions of humans.
Extrachromosomal elements (ECEs) are major components of the human microbiome, expanding the gene repertoire of host bacteria to alter their traits. We developed long-read metagenomics technology coupled with an efficient microbial DNA extraction method from saliva samples and discovered a previously unrecognized family of ECEs. These ECEs reside in 68% of the human oral microbiome globally. We refer to this ECE as “Inocle”, characterized by insertion sequences encoded, oral origin, and circle genomic structure. Inocles are plasmid-like elements of an average genome size of 330kb, having Streptococcus as a host bacterium, and encode a series of genes related to stress tolerance and cell wall modification. Moreover, Inocles showed significant associations with immune-related cells and proteins in peripheral blood and marked reductions in patients with certain cancers. These findings suggest that Inocles potentially boost the adaptive capacity of host bacteria in the oral environment to fit the physiological conditions of humans.
鈴木 穣 先生, 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 生命システム観測分野ショートリード型次世代シーケンシングが臨床検査にも用いられるようになっているが、このアプローチではゲノム上の遺伝子領域に少なからず難読領域があることはよく知られている事実である。この問題の解決にはロングリード型次世代シーケンシングが効果的であることもよく知られているが、個々の臨床的な検体の解析をリーズナブルなコストと労力で実現することは現実的な高いハードルとして残されていた。本講演では、その解決策の一つとして、以前よりも長い領域のカバーが可能になっているロングPCRと安価なFlongleナノポアフローセルを利用した取り組みを紹介する。
ショートリード型次世代シーケンシングが臨床検査にも用いられるようになっているが、このアプローチではゲノム上の遺伝子領域に少なからず難読領域があることはよく知られている事実である。この問題の解決にはロングリード型次世代シーケンシングが効果的であることもよく知られているが、個々の臨床的な検体の解析をリーズナブルなコストと労力で実現することは現実的な高いハードルとして残されていた。本講演では、その解決策の一つとして、以前よりも長い領域のカバーが可能になっているロングPCRと安価なFlongleナノポアフローセルを利用した取り組みを紹介する。
小原 收 先生, 公益財団法人かずさ DNA 研究所ナノポアシークエンサーは、ゲノム配列解析という本来の目的のみならず、ゲノム機能解析への活用も進んでいる。長い配列を読む性能はヒトゲノムに存在する長い反復配列を克服し、ウルトラロングシークエンスによって染色体の端から端まで解読することに貢献したことは記憶に新しい(T2T計画)。ヒトゲノム解析研究に応用するうえで課題であった塩基コールの精度は年々向上し、最新のポアでは20kbにおよぶ平均リード長と30Xのリード深度を1回の実験で両立できる効果的なプラットフォームとなった。短いリード長では正確なマッピングが困難であったゲノム構造異常の同定に加えて、ハプロタイプ別のゲノム異常や、長い領域にわたるDNA修飾の質的変化など、多様ながんゲノム・エピゲノム異常への活用が進んでいる。本発表では、ナノポアシークエンサーのゲノム機能解析への応用に焦点をあて、本邦で現在展開している全ゲノム解析研究にどう貢献しうるのか、悪性胸膜中皮腫での技術的な応用例を中心に紹介する。
ナノポアシークエンサーは、ゲノム配列解析という本来の目的のみならず、ゲノム機能解析への活用も進んでいる。長い配列を読む性能はヒトゲノムに存在する長い反復配列を克服し、ウルトラロングシークエンスによって染色体の端から端まで解読することに貢献したことは記憶に新しい(T2T計画)。ヒトゲノム解析研究に応用するうえで課題であった塩基コールの精度は年々向上し、最新のポアでは20kbにおよぶ平均リード長と30Xのリード深度を1回の実験で両立できる効果的なプラットフォームとなった。短いリード長では正確なマッピングが困難であったゲノム構造異常の同定に加えて、ハプロタイプ別のゲノム異常や、長い領域にわたるDNA修飾の質的変化など、多様ながんゲノム・エピゲノム異常への活用が進んでいる。本発表では、ナノポアシークエンサーのゲノム機能解析への応用に焦点をあて、本邦で現在展開している全ゲノム解析研究にどう貢献しうるのか、悪性胸膜中皮腫での技術的な応用例を中心に紹介する。
永江 玄太 先生, 東京大学先端科学技術研究センター ゲノムサイエンス&メディシン分野2023年10月、Cas9シークエンスキット(SQK-CS9109)のdiscontinuationと、R10.4.1でのプロトコル非公開という衝撃のニュースがナノポアコミュニティを走った。私たちはこれまでに、Cas9エンリッチメントを使ったターゲットシークエンスにより、ヒト単一遺伝子疾患における伸長タンデムリピートの解析や、ゲノム内のウイルス挿入配列の解析などを行ってきた。ターゲットシークエンスは、関心領域のリードカバレッジを高くすることが可能なため、詳細な解析が可能となり有用性が高い。よって、今後もナノポアユーザーの選択肢として残ってゆくことを切望している。実際は、R10.4.1でも、市販の試薬とLigation Sequencing Kit V14(SQK-LSK114)を利用して実験が可能であるため、我々が行っているR10.4.1を使ったCas9エンリッチメントについてご紹介したい。
2023年10月、Cas9シークエンスキット(SQK-CS9109)のdiscontinuationと、R10.4.1でのプロトコル非公開という衝撃のニュースがナノポアコミュニティを走った。私たちはこれまでに、Cas9エンリッチメントを使ったターゲットシークエンスにより、ヒト単一遺伝子疾患における伸長タンデムリピートの解析や、ゲノム内のウイルス挿入配列の解析などを行ってきた。ターゲットシークエンスは、関心領域のリードカバレッジを高くすることが可能なため、詳細な解析が可能となり有用性が高い。よって、今後もナノポアユーザーの選択肢として残ってゆくことを切望している。実際は、R10.4.1でも、市販の試薬とLigation Sequencing Kit V14(SQK-LSK114)を利用して実験が可能であるため、我々が行っているR10.4.1を使ったCas9エンリッチメントについてご紹介したい。
三橋 里美 先生, 聖マリアンナ医科大学ナノポアシークエンス技術は、その長いシークエンスリード長と塩基修飾の解析が可能であることから、がんゲノム解析において特に染色体構造異常の解析やエピゲノム制御機構の解明に対して新規の知見に繋がる可能性がある新しい技術である。これまで、ナノポアシークエンスの大規模データを産出するためのシークエンス機器は高価であり、研究室レベルでの利用が困難であった。しかし、P2iの発売により、研究室レベルでもナノポアロングリードシークエンスが可能となってきた。 我々の研究室では、2024年3月からP2iを導入し、運用を行っている。脳腫瘍の手術摘出臨床検体に対し、ナノポアロングリードを用いた全ゲノムシークエンスを行っており、P2iを用いることで、週に2症例の腫瘍および正常組織の全ゲノムシークエンスが可能である。データ量にはばらつきがあるものの、カバレッジはx10からx45に達し、腫瘍含有率が高い腫瘍では十分なデータ量の取得が可能である。高性能GPUを搭載しているため、シークエンスと同時にfastqの生成も迅速に行われ、即座に解析に使用することが可能である。最新のdoradoを使用することで、塩基修飾の解析も容易に行うことができる。 P2iは研究室レベルでがんゲノム解析を行うにあたり十分な性能を有している。本講演では、研究室によるP2iの運用の紹介と、腫瘍検体を用いた実際のデータについて紹介する。
ナノポアシークエンス技術は、その長いシークエンスリード長と塩基修飾の解析が可能であることから、がんゲノム解析において特に染色体構造異常の解析やエピゲノム制御機構の解明に対して新規の知見に繋がる可能性がある新しい技術である。これまで、ナノポアシークエンスの大規模データを産出するためのシークエンス機器は高価であり、研究室レベルでの利用が困難であった。しかし、P2iの発売により、研究室レベルでもナノポアロングリードシークエンスが可能となってきた。 我々の研究室では、2024年3月からP2iを導入し、運用を行っている。脳腫瘍の手術摘出臨床検体に対し、ナノポアロングリードを用いた全ゲノムシークエンスを行っており、P2iを用いることで、週に2症例の腫瘍および正常組織の全ゲノムシークエンスが可能である。データ量にはばらつきがあるものの、カバレッジはx10からx45に達し、腫瘍含有率が高い腫瘍では十分なデータ量の取得が可能である。高性能GPUを搭載しているため、シークエンスと同時にfastqの生成も迅速に行われ、即座に解析に使用することが可能である。最新のdoradoを使用することで、塩基修飾の解析も容易に行うことができる。 P2iは研究室レベルでがんゲノム解析を行うにあたり十分な性能を有している。本講演では、研究室によるP2iの運用の紹介と、腫瘍検体を用いた実際のデータについて紹介する。
鈴木 啓道 先生, 国立がん研究センター研究所 脳腫瘍連携研究分野
2023年にSCA27Bが小脳失調症の一型として欧米から報告された。この疾患はリピート伸長病の1つであり、FGF14遺伝子のイントロン領域にあるGAAリピートが通常50回くらいまで連続して並んでいるところ、250回以上に伸長すると、疾患を発症する可能性が有意に高まるとされ、欧米では、比較的頻度が高い疾患とされている。ところが、日本人でこのリピート配列を調べてみると、GAA以外のリピート配列が伸長していることも多く観察された。そこで、リピート配列と疾患との関連を明らかにするため、脊髄小脳変性症と臨床的に診断され、その遺伝学的原因が不明である460例の日本人症例と、日本人コントロール1022例を対象に、PCR法と、ナノポアシーケンサーを組み合わせて、FGF14遺伝子リピート配列を検討した。ナノポアシーケンサーによる解析として、PromethIONを用いたロングリード全ゲノム解析もしくは、GridIONを用いたadaptive sampling によるターゲットシーケンスを行った。 日本人ではFGF14のリピート伸長配列として、病的配列であるGAAリピート以外にGCAリピートが高頻度に見られた。GCAリピート長は、GAAリピート長より長い傾向があったが、ナノポアシーケンサーで取得できる長く連続した配列情報を利用してハプロタイプを検討したところ、GCAリピートは、GAAリピートとは別の祖先DNAに由来する配列で、病的配列であるGAAリピートがさらに変異したものではないことが示唆された。 リピートが伸長していないアレルでは、リピート配列の直前に17塩基の挿入欠失からなる特有の配列変化が存在することが欧米人のゲノムの観察から見出されリピート配列の安定性に寄与する可能性が考えられている。この配列は、今回検討した日本人のリピート伸長がないゲノムでも同様に観察され、民族を越えて見られる変化と考えられた。 患者群とコントロール群における、FGF14リピート配列の分布を調べてみると、GCAリピート伸長は患者群とコントロール群で頻度差はなく、病的効果がないリピート伸長であると考えられた。またGAAリピート伸長配列については、200回以上に伸長したGAA配列が患者群で有意に高頻度に存在することがわかり、疾患発症の閾値として、従来考えられていた250回より短く、200回程度である可能性が示唆された。 今回の検討で、SCA27Bと診断された症例は、従来の疾患発症閾値(リピート数250回以上)を超えた例が8名、リピート数200回以上だった例が14名だった。日本人におけるSCA27Bの頻度は、疾患発症閾値を250回以上で考えると1.7%であり、欧米圏(国や民族により異なるがおよそ13-61% と報告されている)に比べ頻度が低いと考えられた。 今回の検討から、GAA-FGF14ローカスは、病的配列であるGAAリピートの伸長よりも、進化的に別の祖先に由来する非病的なGCAリピート伸長がより長いという、これまでのリピート伸長病ローカスには見られない特徴があると考えられた。
2023年にSCA27Bが小脳失調症の一型として欧米から報告された。この疾患はリピート伸長病の1つであり、FGF14遺伝子のイントロン領域にあるGAAリピートが通常50回くらいまで連続して並んでいるところ、250回以上に伸長すると、疾患を発症する可能性が有意に高まるとされ、欧米では、比較的頻度が高い疾患とされている。ところが、日本人でこのリピート配列を調べてみると、GAA以外のリピート配列が伸長していることも多く観察された。そこで、リピート配列と疾患との関連を明らかにするため、脊髄小脳変性症と臨床的に診断され、その遺伝学的原因が不明である460例の日本人症例と、日本人コントロール1022例を対象に、PCR法と、ナノポアシーケンサーを組み合わせて、FGF14遺伝子リピート配列を検討した。ナノポアシーケンサーによる解析として、PromethIONを用いたロングリード全ゲノム解析もしくは、GridIONを用いたadaptive sampling によるターゲットシーケンスを行った。 日本人ではFGF14のリピート伸長配列として、病的配列であるGAAリピート以外にGCAリピートが高頻度に見られた。GCAリピート長は、GAAリピート長より長い傾向があったが、ナノポアシーケンサーで取得できる長く連続した配列情報を利用してハプロタイプを検討したところ、GCAリピートは、GAAリピートとは別の祖先DNAに由来する配列で、病的配列であるGAAリピートがさらに変異したものではないことが示唆された。 リピートが伸長していないアレルでは、リピート配列の直前に17塩基の挿入欠失からなる特有の配列変化が存在することが欧米人のゲノムの観察から見出されリピート配列の安定性に寄与する可能性が考えられている。この配列は、今回検討した日本人のリピート伸長がないゲノムでも同様に観察され、民族を越えて見られる変化と考えられた。 患者群とコントロール群における、FGF14リピート配列の分布を調べてみると、GCAリピート伸長は患者群とコントロール群で頻度差はなく、病的効果がないリピート伸長であると考えられた。またGAAリピート伸長配列については、200回以上に伸長したGAA配列が患者群で有意に高頻度に存在することがわかり、疾患発症の閾値として、従来考えられていた250回より短く、200回程度である可能性が示唆された。 今回の検討で、SCA27Bと診断された症例は、従来の疾患発症閾値(リピート数250回以上)を超えた例が8名、リピート数200回以上だった例が14名だった。日本人におけるSCA27Bの頻度は、疾患発症閾値を250回以上で考えると1.7%であり、欧米圏(国や民族により異なるがおよそ13-61% と報告されている)に比べ頻度が低いと考えられた。 今回の検討から、GAA-FGF14ローカスは、病的配列であるGAAリピートの伸長よりも、進化的に別の祖先に由来する非病的なGCAリピート伸長がより長いという、これまでのリピート伸長病ローカスには見られない特徴があると考えられた。
宮武 聡子 先生, 横浜市立大学附属病院遺伝子診療科小児白血病の診療においては、白血病細胞に生じているゲノム異常を把握し、そのゲノムプロファイルに応じた精密な治療選択を行う必要がある。特に、構造異常やコピー数変化の検出が重要であり、迅速なゲノム異常の把握が適切な治療計画の策定と最適な治療強度の実施に繋がる。そこで我々は、白血病に対するゲノムプロファイリング検査としてのロングリード解析の意義を検討するため、adaptive sampling技術を用いて造血器腫瘍関連遺伝子領域を濃縮したtargeted adaptive sampling with long-read sequencing (TAS-LRS)を試みた。小児白血病患者28症例の検体を用いた結果、臨床検査(核型分析やマルチプレックスPCR)で検出されているすべてのゲノム異常がTAS-LRSでも検出された。また、全ゲノム解析の結果と比較すると、一部の一塩基置換や挿入/欠失変異は全ゲノム解析のみで検出されたが、Ig/TCR領域や反復配列が多い領域の構造異常はTAS-LRSでのみ検出可能であった。さらに、DNA上の切断点を微小残存病変の評価に用いることや、薬剤感受性多型のdiplotype解析も可能であることが確認できた。TAS-LRSは、迅速かつ疾患の特性に応じた柔軟な解析が可能であり、小児白血病の治療選択に有用なゲノムプロファイリングとして有望である。
小児白血病の診療においては、白血病細胞に生じているゲノム異常を把握し、そのゲノムプロファイルに応じた精密な治療選択を行う必要がある。特に、構造異常やコピー数変化の検出が重要であり、迅速なゲノム異常の把握が適切な治療計画の策定と最適な治療強度の実施に繋がる。そこで我々は、白血病に対するゲノムプロファイリング検査としてのロングリード解析の意義を検討するため、adaptive sampling技術を用いて造血器腫瘍関連遺伝子領域を濃縮したtargeted adaptive sampling with long-read sequencing (TAS-LRS)を試みた。小児白血病患者28症例の検体を用いた結果、臨床検査(核型分析やマルチプレックスPCR)で検出されているすべてのゲノム異常がTAS-LRSでも検出された。また、全ゲノム解析の結果と比較すると、一部の一塩基置換や挿入/欠失変異は全ゲノム解析のみで検出されたが、Ig/TCR領域や反復配列が多い領域の構造異常はTAS-LRSでのみ検出可能であった。さらに、DNA上の切断点を微小残存病変の評価に用いることや、薬剤感受性多型のdiplotype解析も可能であることが確認できた。TAS-LRSは、迅速かつ疾患の特性に応じた柔軟な解析が可能であり、小児白血病の治療選択に有用なゲノムプロファイリングとして有望である。
加藤 元博 先生, 東京大学医学部附属病院 小児科近年のシーケンス技術の発展により、ゲノムの網羅的な解析が一定のレベルで可能となった。しかし、セントロメア配列のような高度な繰り返し配列構造を持つ領域は、従来のシーケンス技術では解析が難しく、ゲノム解析分野のフロンティアとして存在し続けている。最先端のロングリード技術の導入により、これらの難読領域の解析がようやく可能になりつつある。 本研究ではまず、ウルトラロングリードを用いたセントロメア配列の解析に関する我々の試みを紹介する。がんゲノムにおいて、セントロメアにおける切断点を持つ構造異常は数多く知られているが、その塩基配列レベルでの解析は従来のショートリード技術では困難であり、セントロメアにおける構造異常の生成機序の解明は十分に進んでいなかった。ここでは、骨髄異形成症候群におけるder(1;7)(q10;p10)を対象に、セントロメア配列のアセンブリ方法と転座の切断点の決定についての結果を紹介する。 次に、ショートリードを用いたセントロメア解析の新しい方法論について紹介する。疾患とセントロメア配列の関連性や他の一般的な傾向を明らかにするためには、多くの検体の解析が不可欠であり、コストの観点からロングリード技術を大規模に適用することには制約が伴う。ここでは「セントロメア配列マーカー」をパンゲノム参照配列から抽出し、ショートリードをセントロメア配列解析に用いる枠組みについて紹介する。具体的な実例として、セントロメア配列の分類、血液腫瘍におけるder(1;7)(q10;p10)の切断点の復元について紹介する。
近年のシーケンス技術の発展により、ゲノムの網羅的な解析が一定のレベルで可能となった。しかし、セントロメア配列のような高度な繰り返し配列構造を持つ領域は、従来のシーケンス技術では解析が難しく、ゲノム解析分野のフロンティアとして存在し続けている。最先端のロングリード技術の導入により、これらの難読領域の解析がようやく可能になりつつある。 本研究ではまず、ウルトラロングリードを用いたセントロメア配列の解析に関する我々の試みを紹介する。がんゲノムにおいて、セントロメアにおける切断点を持つ構造異常は数多く知られているが、その塩基配列レベルでの解析は従来のショートリード技術では困難であり、セントロメアにおける構造異常の生成機序の解明は十分に進んでいなかった。ここでは、骨髄異形成症候群におけるder(1;7)(q10;p10)を対象に、セントロメア配列のアセンブリ方法と転座の切断点の決定についての結果を紹介する。 次に、ショートリードを用いたセントロメア解析の新しい方法論について紹介する。疾患とセントロメア配列の関連性や他の一般的な傾向を明らかにするためには、多くの検体の解析が不可欠であり、コストの観点からロングリード技術を大規模に適用することには制約が伴う。ここでは「セントロメア配列マーカー」をパンゲノム参照配列から抽出し、ショートリードをセントロメア配列解析に用いる枠組みについて紹介する。具体的な実例として、セントロメア配列の分類、血液腫瘍におけるder(1;7)(q10;p10)の切断点の復元について紹介する。
白石 友一 先生, 国立がん研究センター研究所 ゲノム解析基盤開発分野
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