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大野のパズルを解決 — 太古から存在する性 染 色体システムを解 明

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1960 年代に、著名な細胞遺伝学者である大野乾が、オレゴンハタネズミ(Microtus Oregoni)における非定型的な性染色体システムを報告しました。同氏は、雌が核型として XO、雄が XY を持ち、雄は配偶子形成時にY 染色体を付与するか、あるいは性染色体を全く付与しないという仮説を提唱しました。当時は激しい議論が巻き起こりましたが、このパズルの背後にあるメカニズムは、Couger ら(2021)1,2の最近の研究まで約60年にわたり未解決のままでした。

この興味深いシステムを探査する初期の試みでは、雌雄ハタネズミのゲノム D N A のショートリードシークエンスが 使 用され 、 雄に特 異的な X 染色体の存在が明らかになりました。興味深い点として、保存された Y 染色体遺伝子のアンプリコンシークエンスにより、この遺伝子が雌雄両方のハタネズミに存在することが示されました。ハタネズミ属の近縁種の雌にはそのような Y 染色体遺伝子が発見されなかったことから、このシステムが約 1 億 5000 万年にわたり独 立 に 進 化してき たことが 分 かります

‘ナノポアのウルトラロングリードにより)関心の高い領域の橋渡しが できました。以前に試した他の 技術ではなし得なかったことです’1

しかし、このような Y 遺伝子の位置と順 序は未解決だったため、Couger らのチームはロングリードによるゲノムアセンブリを実施しました。最初のロングリードアセンブリは「きわめて優れた」ものでしたが、性染色体のコンティグは(それ以外の)常染色体のコンティグよりも短く、その原因は性染色体の反復性の高さにあるのではないかと考えられました1。これを解決するため、同チーム

はウルトラロングナノポアシークエンスリードに目を向けます。最近発売された Ultra-Long DNA Sequencing Kit を使用したところ、2枚の PromethION Flow Cell により「驚異的な速さでデータを取得」、N50 は 91 kb となり、かなりの割合がウルトラロングリードとなりました1

‘ウルトラロングリードデータにより、反復配列であっても優れたアライメントが得られました’1

高品質のウルトラロングナノポアデータはゲノムとのアライメントが「きわめて良好」で、SNP の正確なコールとフェージングが一層実施しやすくなりました1。主任研究者の Matthew Brian Couger は、性染色体の一領域とのアライメントが認められた 410 kb のリードに注 目 を 促 し 、「ほとんどの人のアセンブリにとっては実に密度の高いコンティグに相当するもので、リードの作成には当たりません」とコメントしています。このロングリードにより、リピート配列が豊富な 性 染 色 体 の 非 ア セ ン ブ リ 領 域 が 繋 が り ま し た(図1)。また、1 本の染色体内および父性 X 染色体と母性 X 染色体の間で互いに関連する遺伝子の位置が明らかになっています。

図1関心領域であるハタネズミの性染色体反復配列の初回アセンブリで、ナノポアのウルトラロングリードによりギャップを埋めることができました。図の提供は Matthew Brian Couger(Brigham and Women’s Hospital、米国1

これにより大野のパズルは解決され、雄の配偶子は父性 X 染色体を 1 本持ち、雄の子孫を生み出すか、X 染色体を全く持たず、雌の子孫を生み出すという独特な性染色体システムが明らかになりまし た(図2)。

図2
母性 X 染色体と父性 X 染色体の正確なマッピングが、オレゴンハタネズミの性決定に関する新たなモデルの構築に役立ちました。雄は母 性 X 染 色 体( XM)と父性 X 染色体(XP)を両方持ち、Xist による父性コピーのサイレンシングが起こるのに対して、雌は母親の X 染色体 1 本 の み( XM)を受け継ぎます。図の出典:Couger et al. (2021)2
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References

1. Couger, M.B. Presentation. Available at: https://nanoporetech.com/resource-centre/video/lc21/ultra-long-nanopore… [Accessed 20 January 2022]

2. Couger, M.B. et al. Science.372(6542):592-600 (2021)